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解説:上 ″糸に取がたき悪しき繭を撰出し″と、図中の説明にもあるように、生糸の生産工程のなかで、不良品の繭を利用して生産されるのが真綿である。汚れているなどで、生糸をとれない繭からサナギや不純物を除いてから灰汁(あく)で煮た後に、よく水洗したものを、指や引盤などにかけて引っぱって繊維状にする。不良品の活用法であったから、生糸の生産地では殆どのところで真綿を作っていた。特に、東北地方では盛んであったが、防寒用の需要が地方で多かったことによるものと推定される。上質の真綿は糸に製して紬などに使用することもあったが、大部分は綿の代用として使われた。しかし、全体として需要量は漸減の傾向にあった。 下 昆布といえば松前昆布が古代から著名であったが、津軽海峡をはさんだ津軽の沿岸地域も昆布の採取・出荷が盛んであった。採取には図のように長柄の鎌で海底に生育した昆布の根を刈り、浜辺で天日乾燥したものを全国に出荷した。現代の青森県下の昆布生産は下北半島側が中心で、県内生産の約80%を占めるといわれるが、図は下北とは反対の津軽半島側の北端にある今別地方をとりあげている。同地方でも今別村の西隣にある浜名村の昆布が、″三厩昆布″として盛んだったというが(『新撰陸奥国誌』)、今別が選ばれたのは近世中期に貞伝上人が伝えたという投石式の増養殖事業が始まっていたからであろうか(『青森県百科事典』)。(原島) ≪「大日本物産図会」≫ の解説はNo.20を参照。
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