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解説:上 荒布(あらめ)は日本の沿岸各地で穫れたが、ここには志摩国鳥羽の海岸の荒布漁が紹介された。解説文によれば、漁人は海底の荒布の根を刈るだけで、根を切られた荒布は自然に海上に浮かび、波にのって海岸にうち上げられたものを集めたという。なお、荒布はアワビやサザエの重要な餌になるので、同地でアワビがとれるのは、荒布の繁茂と関係している。 下 盆石は、文字通り盆の上に名石をのせて鑑賞するもので、室町期に中国から伝来した遊芸の一種であった。それが、中心となる石のほかに、添え石を加え、周圍に砂を撒くようになって、枯山水の庭のように、波や雲や月などを象徴するに至った。砂だけでなく、コケや草木を配するようになると、盆景・盆庭となり、さらに人物や家屋の模型を加えたものが箱庭へと発展した。この変化には、日本人の見立て好きや、縮図好みの文化志向が働いているといえよう。 盆石の砂の撒き方に重点がおかれると、それは盆画となる。撒き方だけでなく、色砂を混ぜることによって変化をつけることも試みられたが、本来は石の形を観賞しようとするもの故、色砂に頼りすぎると、大道芸の砂絵かきになってしまうと蔑まれた。図は鳥羽産の色砂を使った盆石飾りである。(原島) ≪「大日本物産図会」≫ の解説はNo.20を参照。
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