日本実業史博物館準備室旧蔵資料
37TA
01.絵画/08.商業
01.絵画
08.商業
衣喰住之内家職幼絵解ノ図 〔全体〕
絵師: 落款: 本名等: 版元:   
技法: 法量:360×7830
数量:1 
37TA/00063-001
00063
解説:No.63の全景。家の普請等の作業工程を詳細に図解した教育用の錦絵。大判33枚を糊付けして横一列につないでいるが、種類、順序が入り乱れている。右から通し番号を振って内容を整理すると次のようになる。A: (1)~(14)、(18)~(23) 「衣食住之内家職幼絵解ノ図」 国輝の落款ありB: (15)~(17)、(27)~(28)  杉と蕨の製法と用法 国輝の落款ありC: (24)~(26)、(29)~(33) 養蚕と水田耕作 落款無し  目録に記載の「衣食住之内家職幼絵解ノ図」というタイトルに相当するのはAだけで、B、Cは、ある時点で所有者が取り合わせたものと思われる。ただし、これらには二つの共通点がある。一つは、子供向きの教育的な内容であること。もう一つは、どの絵にも通常の錦絵が備えているはずの改印(検閲の印)がなく、版元の記載もないこと。出版のチェックを受けていないという事は逆に、官製の出版物であることを意味する。実際にこの一群の作品には、「文部省製本所発行記」という朱印が押されたものが多くある。1873(明治6)年頃に文部省が子供向けに錦絵を制作していたことが知られており、本作品はその一部である。 Aはすべて「衣食住之内家職幼絵解ノ図」という題名が記されている。一つのまとまりをなしていることは明らかだが、画中に記された番号をめぐり、いくつかの問題がある。番号を有するものと有しないものがあり、順序もバラバラである。同じ「衣食住之内家職幼絵解ノ図」であるNo.64と比較、点検すると、次のようなことがわかる。No.64の5点はNo.63にも同じ版の作品が含まれるが、それぞれ番号の有無という点で異同が見られる。つまり、No.63では番号があったのにNo.64では番号がない((1))か、その逆((3)、(12)、(18)、(19))になっている。両者を比較すると、同じ版でも番号の記されたものの方が、刷りの状態がよい。おそらく、はじめは番号を入れてセットで制作したが、後にばら売りされる際、番号を削られたものと思われる。しかし、この点を勘案しても、番号の重複((1)と(22))や、番号と建築順序が合わない((5)と(8)ほか)などの問題が残る。「衣食住之内家職幼絵解ノ図」全体で一つの通し番号ではなく、大工と、その他の職人で、それぞれの工程に応じた番号が振られていたと考えるべきだろう。 Bは、杉と蕨の利用法を図解したもの。Aと同じ国輝の作であり、杉がAと内容的につながるため、一緒に貼り込まれたものだろう。 Cは、上段に物産の一般的説明、下段に作業工程の絵画的表現という形式的をとる。落款は記されておらず、国輝とは作風も異なる。全体に表情が硬く、別系統の絵師の手になるものと思われる。この不明の画家は文部省製本所関係の作品を多数制作している。 A~Cのいずれにも、制作年を直接示すものは記されていない。目録では1875(明治8年)と書かれているが、作者である2代国輝の没年は1874(明治7)年(原色浮世絵大百科事典)であるため、再検討を要する。 (1)「第一」 家の普請のため図面を描く「第一 凡世の中に衣喰住の三ツは身をたもつ道具にて其一とつの住の字ハ人々の住居する家の事なり先其家を作らんとおもふにハ能普請になれたる人と住居勝手のよきようふに相談をして何畳敷々々といふ間どりを極め其上大工を呼んで普請の絵図に仕様といふ拵やうの書附をさせる図」(以下の各図では、詞書省略) (2)番号無し 普請を請け負った大工が材木屋に買い付け (3)番号無し(No.64では「第六」) 大工が人足と共に杭打ち (4)「第七」 石工が土台下用の石を刻む 「第六」 水縄を引きその下の傾きを水もり台という水準器で測る (5)「第十三」 鳶職が足場を組み、それに上って柱を立て梁をかける (6)「第九」 室内の造作、鴨居を渡し床を張り格子を組む (7)「第六」 雨戸、襖、障子等の建具を作る (8)「第十一」 杉の屋根板を打ち付ける場面 「第十二」 「こまへがき」という壁の下地づくり (9)番号無し 壁塗りと、壁塗り用の土に藁を混ぜる (10)「十五」 瓦葺きと室内の壁塗り (11)「第五」 植木屋が庭に手水鉢を据え、垣根を作る場面と、左官が室内の壁を仕上げに上塗りする場面 (12)番号無し(No.64では「十八」「十九」「二十」) 屋根瓦の隙間の漆喰塗り、樋の取り付け、板壁に渋を塗る (13)番号無し 畳作り (14)「第四」 経師が襖、障子に紙を張る (15)「杉の苗仕立方」 杉の種まきから、苗を育てるまで (16)「杉の生育方」 杉の植え付けから、成長するまで (17)「杉の用」 杉の用途色々、柱、板、丸太、屋根板、抹香、線香、杉玉 (18)番号無し(No.64では「第二」) 材木となる木を、山から切り出す (19)番号無し(No.64では「第三」) 材木を筏に組んで川の上を輸送 (20)「第八」 材木から板を切り出す(木挽き) 「第九」 大工が材木をチェックして墨糸を引く (21)番号無し 大工が材木を加工する場面、かんな、鋸、鑿、ちょうな等 (22)「第一」 鍛治屋が焼けた鉄を金槌で打つ (23)「十六」 瓦と煉瓦の製造 (24)番号無し 上段に1齢から5齢までの蚕の図、下段に育成の場面 (25)番号無し 上段に繭と蚕蛾の図、下段に糸紡ぎの場面 (26)番号無し 上段に絹製品の図、下段に機織りと縫い物の場面 (27)「蕨の製方」 蕨の図、根をつぶして蕨粉を取る場面 (28)「蕨の用」 蕨粉の用途、反物・傘・油紙・桐油の糊、求肥、蕨餅 (29)番号無し 「稲の種類」 上段に稲の図、下段に種蒔き代掻きの場面 (30)番号無し 上段に餅の図、下段に田植えの場面 (31)番号無し 上段にお櫃、菓子等の図、下段に水田に水を引く場面 (32)番号無し 上段に酒類の図、下段に刈り取った稲を脱穀をする場面 (33)番号無し 上段に藁製品図、下段に俵を蔵に運ぶ場面なお、上記のうち、多くが本コレクション中に重複して存在し、別の目録番号が振られている。(田島)
史料群概要
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