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解説:発行が明治18(1885))年2月ということで、当時の時事問題を風刺した作品である。前年の1884年にはインドシナの支配権をめぐって清仏戦争がおこり、清国が敗戦して天津条約が締結された。右上部で″フランス″の旗を振る男達と中国服の子供が遊戯をしているのは、当然この紛争を踏まえたものである。1885年4月には、その状況を受けて朝鮮で甲申改変がおきたが、背後には中国と日本の存在が明らかであった。虎の曲芸は、その点を風刺している。 一方、国内では維新直後からの課題であった政治体制に関する議論が、自由民権運動を通じてたかまるとともに、政府側からの弾圧があったりして、本図の翌1886年には星亨らによる大同団結運動へと移行する時期であった。左上の古道具屋で″国″″議″と書いた貝の値段を値切ろうとする客と、まけないと頑張る商人は、この動向を捉えたもの。道具のなかに″自由″と書いた額があるのも、1884年に解散した自由党を暗示したものであろう。 こうした社会状況下で、政治と結託した政商が巨利を貪る一方で、金儲けの甘言で一般人から資金をしぼり取る構図を描いたものが左上の図で、いずれにしても欲心に根ざすことが全体のテーマとなって、題名に示されている。
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