日本実業史博物館準備室旧蔵資料
37TA
01.絵画/07.産業
01.絵画
07.産業
蚕養草 一 獅子蚕
絵師:房種 落款: 本名等: 版元:丸鉄  日本橋通二丁目 
技法:錦絵 法量:367×250
数量:1 
37TA/00163-001
00219
解説:蚕の育成から、繭より糸を取り出すところまでを描いた5枚からなる揃物。画面は連続しない。戸外の風景が具体的にある地方を表すのかどうかは不明だが、山間の地域であることはわかる。しかし作業に従事する女たちの服装は、華美に描かれている。1. 一 獅子蚕(ししこ)蚕種紙上で孵化した蚕を羽箒でざるに払い落とす作業を中央の娘が行う。右手の女は蚕種紙を運ぶ。獅子とは2齢の蚕を指す用語。左奥の子どもが手にしている棒の先に付いているのが「絹笠明神」の像であろう。絹笠明神とは衣襲明神とも書き、蚕の守り神として信仰された。戸外にはすぐそばに川があり、小橋を男が馬を引いてわたっている。表題の「獅子蚕」とは2齢の蚕を指すが、ここに描かれているのはその前の段階であり、一致しない。 2.二 には蚕(こ)/ふなの起(おき)桑の葉を刻む場面。桑を背負わせた馬を曳いてきた農婦が土間から部屋の縁に腰掛け、キセルを持って一服している。室内では振袖の娘が桶の上に蒲鉾型のまな板をわたし、その上で桑を刻む。右手の少女が空いた籠を片付ける。庭には石灯籠と万年青の鉢植えが見える。「には蚕」とは5齢の蚕。「ふなの起き」とは4齢を指す。しかしこの画面中には蚕は描かれていない。 3.三 たけこ箸にて蚕の世話をする場面。手前の女が箸を持ち、後ろの女が蚕の入った平たく四角い籠を運んでくる。右の少女は蚕の入った籠の蓋を開けている。「たけこ」とは『養蚕秘録』に言う「鷹の居起き」であろうか。だとすれば2齢の蚕を描いていることになるが、2の表題とは順序が前後する。 4.四 まゆかく枝に付いた繭を取り外す場面。手前の女が繭を手で取って丸い籠に入れている。左手奥の少女がそれを運ぶ。右の蚕棚に見える繭は、乾燥させているところか。右手の女が一番上の籠に手を掛けている。 5.五 繭糸/はた糸繰りと機織。手前の竈にかけられた鍋の中には多数の繭が火にかけられている。手前の振袖の娘は糸巻きを右手で廻しながら糸を巻き取っている部屋の中ほどでは一人の女が機織機で機を織る。窓の外には柳が葉を出し、燕が舞うことから、季節が初夏であることがわかる。(田島) <参考>蚕は4度の脱皮を行った後に繭を作る。脱皮前の状態を眠りという。 1齢 獅子前 幼飼い 2齢 獅子の居起き 3齢 鷹の居起き 4齢 船の居起き 5齢 庭の居起き
史料群概要
画像有