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解説:群馬県松井田町で営業する各種の商店32軒を並べた双六図。もっとも、″振り出し″と″上り″は設定してあるが、それ以外の、例えば″飛ばし″や″戻り″の要素はない。従って、配列を渦巻状に並べただけの双六風の作品である。各店ごとに店の外観を描いて、それに営業種目と店名を記載したもので、同町の商店案内を目的としている。このような商店案内は、江戸時代に出版された『買物案内』に始って、明治十年代の後半(1884年ごろ)からは、″名家図録″″商工案内″などの名称で銅版画を使った冊子体として刊行されている。本図には刊行年の記載がなく、掲出されている商店の出店や閉店による年代推定も困難であろう。ただし、No.725の『大宮町繁昌寿娯録』と全体の構成が類似しており、同書が1902(明治35)年6月に刊行されているので、その前後、恐らくそれよりやや遅れた刊行と推定する。それは、本図には編輯発行者の名前がないのに、印刷者として″仝市仝町仝番地″と全く意味のない記事になっているが、大宮町の方には編輯発行者の住所と名前を記入した上で、印刷所には″仝県仝郡仝町″と記載してあって、本図の方はこれを借用した形跡が大きいからである。なお、裏面には旧所有者が″アジア州大日本帝国上野国群馬県碓氷郡松井田町大字松井田駅字下町百八〇番地村山典太郎方″と打ちつけの墨書がある。
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