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解説:日本全国の名産品から19種を選択して双六に仕立てたもの。名産の多くは『日本山海名産図会』に採用されているもので、摂州伊丹酒(一)、讃州豊島石、予州鴨、熊野蜂蜜、吉野葛(二)、伊勢鰒、広島牡蠣、若狭鰈(三)、土州鰹、赤石(明石)鮪、勢州蛤、越前海胆、富山神通川鱒(四)、越後布、蝦夷膃肭獣(五)、および宇次(治)茶、出羽秋田款冬、甲州葡萄、加賀九谷の19種である(カッコ内の数字は前掲書の巻数)。このうち九谷は、前掲書巻五に伊万里焼が掲載されているが、本図の発行元が北陸であるから、当然のようにさし替えたのであろう。上りを神通川の鱒にしたのも同じ趣旨である。宇治茶は同系の『日本山海名物図会』に収録されているが、?冬と葡萄は両書ともに記載されていない。図のなかで、品名と挿画が一致しないのが″伊勢鰒(いせあわび)″で、本来なら鮑を描くべきなのに伊勢エビが描かれている。実は『名産図会』には伊勢鰒と並んで伊勢海蝦(えび)も採録されており、思い違いで図を取り違えたのであろうか。もっとも、この誤りによって、本図が同書を参考に作製されたことを暗示してくれる。なお、本双六は『北陸政論』の明治27年1月1日号の付録であるが、正月の家庭遊戯として双六が普及していたことの一証である。″上り″の図に″信一″の丸印があるが、この作者については不明である。
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