日本実業史博物館準備室旧蔵資料
37TA
01.絵画/07.産業
01.絵画
07.産業
宮中養蠶之図
明治21
1888
絵師:竹葉 落款: 本名等: 版元:井上茂兵衛  日本橋区馬喰町三丁目十九番地 
技法:錦絵 法量:368×722
数量:3続 
37TA/00319
00432
解説:宮中養蚕の様子。明治10年代の作品(No.61、No.313などを参照)からは様変わりし、皇后、官女とも洋装になっている。3枚続の右には、軍服姿で椅子に座って正面を見る明治天皇。錦絵の明治天皇像は大きく分けると、1873(明治6)年内田九一撮影の写真と、1888(明治21)年にキヨッソーネによって描かれ御真影として流布した画像の二系統に分かれるが、本図では両方の特徴が混在している。皇后は洋装で、向かって右に立つ。裾の広がったスカート。紫色の上衣は下半身に前掛状に伸びている。頭には羽根飾りの付いた帽子。椿の花を前面に挿す。天皇の背後の台には、他の宮中養蚕図同様大きな花瓶が飾られていたが、本図では花が牡丹から菊に変わっている点が興味深い。 中央の図では、椅子に腰掛け机の上で作業をする官女たちが描かれる。奥の者は孵化した蚕を、羽箒を使って、蚕種紙から蚕座となる長方形で浅い籠(箔)に移す、掃立の作業を行う。手前では、箸で蚕の位置を整えつつ桑を与える作業を行う。桑は右下の丸い籠に備えられている。奥の左側の官女はできあがった繭を籠に入れて運んでいる。蚕を育てる過程を3つの作業に代表させている。 左の図では、糸を紡ぐ作業を見せる。奥では座繰器を机に組み込んだような機械を用い、釜でゆでられた繭から糸を取り出し巻き取っている。手前では、真綿を取る工程を描く。女官たちの着ている衣裳は、大体ワンピース型だが、和服に比べて作者がこれを描き慣れていないのは明かで、細部の意匠に怪しい部分が残る。髪型も洋髪で、皇后同様、椿の花を挿している。この時期の浮世絵の常として、ファッションが洋服になっても、顔の表現は従来の浮世絵美人図と同様の様式で描かれる。 一見近代的な情景だが、養蚕・製糸の技術だけ見れば、これらの作業は従来の方式と変わらない。本図がこの当時の宮中養蚕の様子をどれだけ反映しているかは、興味深いところだが、かつての袴姿の女官同様、華美な衣裳に力点を置いた美人画としての性質は変わっていないものと思われる。(田島)
史料群概要
画像有