|
解説:揃物としては14番目になる。傘といえば、竹と和紙で作った和傘しかなかったところへ、西欧から金属の骨に布を張った洋傘が輸入された。当時の人は、それを広げた形から連想して、洋傘のことを蝙蝠傘(こうもりがさ)といった。そのころは、江戸の町でも夕暮れになると蝙蝠が飛びかったというから、人びとにも身近な動物であって、自然にこの呼び名が生れたのであろう。その後、洋傘が主流になってからも、1970年代ころまでは、年配の人を中心に蝙蝠傘(略して”こうもり”とも)という呼び名が使われていた。 そこで、ここに登場する暁星五郎だが、歌舞伎では妖術使いの盗賊として活躍した。妖術に利用するのは蝙蝠であって、巨大な蝙蝠の背に乗って飛び廻るという設定であった。従って、この図で星五郎がかぶっている毛皮は蝙蝠と考えられるが、一見したところでは余り蝙蝠らしくない。ともかくも、大蝙蝠に乗って飛び廻る星五郎であれば、コマ絵のこうもり傘が風を受けて、さしている人が吹きあげられそうになっているのは、役の性格とうまく一致していることになる。 なお、暁星五郎という人物が、いつごろ、どのような経路で誕生したものか、その起源については不明である。 No.400参照。
|