日本実業史博物館準備室旧蔵資料
37TA
01.絵画/03.経済・金融
01.絵画
03.経済・金融
東京名所三十六戯撰 開運はし
明治5
1872
絵師:一景 落款: 本名等: 版元:萬孫  日本橋通 
技法:錦絵 法量:352×242
数量:1 
37TA/00426
00630
解説:一景の「東京名所三十六戯撰」は、開化名所を描いたシリーズでありながら、描写の主眼はそこに繰り広げられる滑稽な人々の方にある。同じシリーズであるNo.270「元昌平坂博覧舎」でも、博覧会場の様子より、名古屋城のシャチホコを見て腰を抜かす人をモチーフにしている。 本図の題名「開運はし」は正しくは「海運橋」。現在の日本橋一丁目と兜町の間にあった。背後の建物は、1872(明治5)年6月に三井組によって建てられたもので、初め三井為換座、三井組ハウスなどと呼ばれた。擬洋風建築の代表作で、設計・施工は清水喜助。二階建ての西洋風建築の上に唐破風・千鳥破風を備えた城郭風の上層を作り、その上さらに物見櫓風の高楼を突出させるという、実に独創的な様式で作られている。竣工後ほどなく、三井組から、新たに制度化された国立銀行に譲り渡され、1873(明治6)年8月、第一国立銀行として開業した。 橋の上では、大きな荷車に驚いた盲人が、三脚にカメラを据えて建物の撮影をしていた人とぶつかっている。暗幕で前が見えなくなったカメラマンがよろめく。変な帽子をかぶった二人の人夫に引かれる荷車には、多数の赤い旗が立ち、馬に乗る西洋人の絵が描かれている。これはフランス人曲馬師スリエに関係するものと思われる。1871(明治4)年10月26日、招魂社(現在の靖国神社)境内でスリエ一座による曲馬の興業が行われた。翌明治5年2月には浅草寺奥山で再び興業を始めた。本図の改印は1872(明治5)年4月であるから、後者と時期が合う。その内容を描いた錦絵に、国輝の「浅草観音境内ニ於テ興業仕候 フランス曲馬」(マスプロ電工美術館蔵)がある。なお、現在10月26日は「サーカスの日」と定められている。(田島)
史料群概要
画像有