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解説:明治5年9月にわが国で初めてのガス灯を点じた横浜だが(No.562参照)、3年後に経営不振で町会所へ譲渡した時に、1万3500円を起本人労力金の名目で旧経営者高島嘉右衛門へ供与した事実が暴露されて裁判に発展したガス局事件の諷刺画。近江八景をもじった見立絵の一種で、念のためそれぞれの原題を示せば、愚等の判決(比良の暮雪)、早矢仕の思案(矢橋の帰帆)、鼻先の欲の為(唐崎の夜雨)、下手の約定(瀬田の夕照)、密意の勘定(三井の晩鐘)、戦慄の役官(堅田の落雁)、あわての晴乱(粟津の晴嵐)、高島の瓦斯の尽(石山の秋月)。このうち、早矢仕は告訴人4人の代表で弁論の主役を演じた早矢仕有的のことで、同人は丸善の創始者として著名であり、明治二年に横浜で書店丸屋を開店している。また、団団珍聞は明治10年の創刊から約30年続いた諷刺週刊誌であり、五四号は明治11年3月30日発行となっている。この事件の出訴は1月8日、3月14日に原告敗訴の一審判決が出た直後で、″愚等の判決″に編輯姿勢は明瞭である。本図は、白黒の一色刷で本誌へ掲載したものをそのまま色刷りで発行したものであり、本誌同号には、図のみで解説記事はない(東京大学明治新聞雑誌文庫の調査による)。(『明治開化期の錦絵』より)
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