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解説:各種の織物が並ぶ店頭に3名の美人を配す。右から、おまつ、おはる、おむめと記すが、実在の人物かどうかは不明。陳列される縞模様は、同じものがダブらないように、バリエーション豊かに描き分けられている。女たちの着物の柄もそれぞれ変化を付けてあり、あたかも縞の見本帳のごとくである。 右手に看板とおぼしき縦長の板が掛けられている。ここがやや不自然な空白となっていることから、当初は店名などが書かれていて、のちに削除されたものかもしれない。 新材木町とは、現在の日本橋堀留町あたりの町名。かつてここには東堀留川があり、その東岸に新材木町はあった。その名の通り江戸時代には材木を商う店が多かったが、明治初期には「商賈多ク、雑業之ニ次キ、工匠之ニ次ぐ」(『東京府史』1878年)という状況だったらしい。 「女粧三十六貴賤」なるシリーズは、本コレクションにはこの1点しかなく、どのような構成であったかは不明である。名前からすると、菱川師宣の『和国百女』や西川祐信『百人女郎品定』の流れを汲む、さまざまな階層・職業の女を描き分けた美人画であろう。「三十六貴賤」とはもちろん「三十六歌仙」のもじりで、本図に3名の女性が描かれることから、12枚揃であったと推察される。作者は国貞とのみ記すが、制作期から見て、初代国貞の門人で後に豊国を名乗った二代国貞である。(田島)
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