日本実業史博物館準備室旧蔵資料
37TA
01.絵画/03.経済・金融
01.絵画
03.経済・金融
東京名勝之内常盤橋紙幣局新建出来之図
明治10
1877
絵師:広重III 落款: 本名等:安藤徳兵衛 版元:伊勢屋茂兵衛  大伝馬弐丁目 
技法:錦絵 法量:372×736
数量:3続 
37TA/00522
00802
解説:この役所は、1871(明治4)年7月、紙幣を印刷する部門として大蔵省に紙幣司が置かれ、同年8月紙幣寮と改称。1877(明治10)年1月には紙幣局と改称し、以後いくどかの組織変更を経て、現在の財務省印刷局に至る。 1876(明治9)年に竣工したこの建物は、常磐橋の西、現在の大手町2丁目にあった。別名朝陽閣とも呼ばれ、2階建て赤煉瓦造りで、正面の上部には菊花の紋、てっぺんに高さ2メートルの鳳凰の像が置かれていた。1872(明治5)年に発行した紙幣に鳳凰の図が用いられて以来、鳳凰は印刷局のシンボルマークとなった。建物はその後関東大震災で消失した。『幕末明治の錦絵集成』によれば、設計は初めイギリス人のウォートルスがあたり、後にフランス人ボアンヴィルに代わったという。ウォートルスは銀座煉瓦街の設計で知られ、ボアンヴィルは工部大学校の設計などで知られる。 本図では、建物の左3分の1を画面からはみ出させることで、眼前に迫る建物の大きさを強調している。右手の遠景には、屋根上にシャチホコをのせた駿河町の三井銀行を意味ありげに描き込んでいる。鯱と鳳凰の対比を意図したものだろうか。なお、広重は9日後にもう一つ紙幣局の図を出している。No.631がそれで、同じく3枚組の画面に大きく建物をとらえている。細部はほとんど同一だが、左右を反転した構図にしたことで、印象が大きく変わっている。異なる版元から同時期に同じ題材で依頼を受けたとき、少ない手数で効果的に変化をつける、多忙な広重のテクニックを窺うことができる。(田島)
史料群概要
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