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解説:江戸時代と明治時代の東京の町並みを「古」と「今」に分けて対照するシリーズ。シリーズの解説はNo.82参照。 常盤橋は、江戸城への入口の一つ常盤橋門に架かる橋だったが、1877(明治10)年に石橋となる。現在でも大手町に現存しており、都内最古の石橋とされる。 石垣の向こうに見える建物が印刷局。1871(明治4)年7月、紙幣を印刷する部門として大蔵省に紙幣司が置かれ、同年8月紙幣寮と改称。1877(明治10)年1月、紙幣局と改称。以後いくどかの組織の変更の後、現在の財務省印刷局に至る。 1876(明治9)年に竣工したこの建物は、常盤橋の西、現在の大手町2丁目にあった。別名朝陽閣とも呼ばれ、2階建て赤煉瓦造りで、正面の上部には菊花の紋、てっぺんに高さ2メートルの鳳凰の像が置かれていた。1872(明治5)年に発行した紙幣に鳳凰の図が用いられて以来、鳳凰は印刷局のシンボルマークとなった。建物はその後関東大震災で消失した。 広重はこの建物を大きくとらえた図を完成当初にいくつか描いている(No.522,631)が、本図ではもっとも特徴的な部分である最上部だけの描写にとどめている。開化絵もこの時期にいたって、新しいものをストレートに描くだけでなく街の雰囲気を写し取るという、風景画本来のあり方に近づいていることが感じられる。(田島)
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