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解説:内国勧業博覧会は、明治政府が殖産興業政策の一環として開催した博覧会。1877(明治10)年に第1回の博覧会が行われ、以後、1881(明治14)年、1890(同23)年、1895(同28)年、1903(同36)年と5回行われた。万国博覧会の国内版というべき形式で、全国各地から出品された。内容は、鉱工業、農業、美術工芸など多岐にわたる。 本図は1890(明治23)年、上野公園で行われた第3回内国勧業博覧会を題材にしている。画面の中央、山の上に会場入口の門と、展示館が見える。一番奥にある煉瓦造の建物は、前回の内国勧業博覧会に合わせて建築された博物館である。1877(明治10)年、御雇い外国人ジョサイア・コンドルにより設計された。1878(明治11)年に着工、煉瓦造り2階建ての本格的な西洋建築であった。場所は現在の東京国立博物館本館とほぼ同じ位置。 手前に大きく描かれた馬車に乗っているのが明治天皇であろう。『明治天皇紀』によれば、これは3月29日のことである。この日天皇は皇后とともに午前9時20分に皇居を出て、博覧会総裁貞愛親王の案内で巡覧し、正午に帰還されたとある。本図は博覧会を見終えて山を下っている場面。上野の山は桜が満開である。開化絵に描かれる桜は普通、出版の季節に関係なく満開に描かれるものだが、本図の場合は、時期的に見て実際に咲いていたとしてもおかしくない。(田島)
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