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解説:北野天満宮の社頭風景である。天満宮といえば梅ということで、本図も梅の季節をあつかっている。(原島) ≪「京都名所」≫ 前号(No.580)と同じく、大阪在住で明治期の錦絵作者である林基春が京都の名所を対象とした連作である。両者とも刊記は1895(明治28)年4月となっており、ほぼ同時の発行であったと考えられる。発行の動機としては、同月1日から京都市で第四回内国勧業博覧会が開催されたことが大きく影響していたとみられる。「京都名所」のなかに同博覧会の会場図が描かれているのは、それを立証している。これに対して大阪では、この時期に特筆されるような行事などは起こっていない。従って、企画としては、まず博覧会に来場する観客向けに「京都名所」が準備され、それに合せるように「大阪名所」を作成したという推理が一応成立すると思う。 ところで、ここには「京都名所」の同一表題による10枚があるが、画面内に番号などはなく、全部で何枚の揃物であるか、この10枚で完全であるかの確証はない。これは前号の「大阪名所」も同じであるが、逆に両者とも10枚であることによって、恐らく10枚で完結とみて差支えないといえよう。ただし、前号は10枚がすべて横判であるが、こちらには4枚の竪判が混っている。同じ揃物に横判と堅判の両方を混在させるのは珍しいが、判の選択は図柄の構成に従っただけで、両判の混在に特別な意味は見出せない。以下、当館で仮に付した番号の順に簡単な解説を加えておく。
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