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解説:表紙の貼題箋には「市中案内雙六」とあり、その上部に″桐生″と鉛筆の上からペンで書き込みがある。桐生市内の商店を中心にして、医師・市場・工場など100軒を渦巻状に配列したもの。類似の作品と同様に、商家の外観に取扱業務と屋号を添えてある。″ふりだし″に説明はないが、蒸気車や信号柱に駅舎があるので桐生駅であろう。″上り″は1591(天正19)年に現地へ遷座したと伝えられる天満宮があてられている。ふりだしと上りを除く各コマには、旧蔵者が記入したとみられる1から100までの数字が残っているが、何故か96と97は同一の図(三輪神社境内凱旋記念碑)に付けられており、百番に相当すると考えられる日本織物株式会社には番号を記入していない。上りの右隣には、当地の主産業である各種の織物を、帯地と衣着に分けて″本地産物″と書き上げている。この双六も、他の類似品と同じく、ただ配列されているだけで、飛びや戻りの記号はない。なお、本図の成立を示す刊記はないが、会社名や石版技法などから1900(明治33)年前後と推定される。そこで疑問となるのは、裏表紙に″天保三年秋買入″と記入されていることで、内容とは一致しない。所蔵者が、保存のために他の表紙を流用したと考えるのが順当であろうか。題名が貼題箋になっているのも、これで納得できよう。(原島)
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