日本実業史博物館準備室旧蔵資料
37TA
01.絵画/07.産業
01.絵画
07.産業
東京名所 上野公園地 内国勧業博覧会 美術館之図
明治10
1877
絵師:広重III 落款: 本名等:安藤徳兵衛 版元:熊谷庄七  小舟町三丁目十番地 
技法:錦絵 法量:372×726
数量:3続 
37TA/00650
01001
解説:内国勧業博覧会とは、明治期、殖産興業政策の一環として開催された博覧会。それ以前に行われていた博覧会、たとえば明治5年の湯島聖堂での博覧会などは、珍奇な古物を見せることを主眼にしていた。しかし内国勧業博覧会は、その名の示すとおり産業の育成が目的であり、書画骨董から「美術」への脱皮がはかられた。 第1回内国勧業博覧会は、明治10年、上野寛永寺跡地で開かれた。東西本館、美術館、機械館・農業館・動物館・園芸館などの展示施設が建ち並んだ。中でも美術館は、会場の中心的な位置に置かれ、他の建物が仮設の木造なのに対し、煉瓦造で建てられたことからも、博覧会のシンボル的役割を果たしていたことがわかる。 本図を見ると、日本でそれまで行われていた掛軸中心の「書画展」から、額装され、壁面いっぱいに飾る西洋風の「展覧会」へ変貌していることが一目瞭然である。 ところで、本図では、飾られた作品の図柄がわかるように描かれているが、これは実際の出品作を正確に写しているのだろうか。会場内部を写した写真が若干残っているが、画面が暗く正確な比較は難しい。そこで『明治十年内国勧業博覧会出品目録』により、出品作品の画題と、本図中の図柄の比較を試みた。目録中の画題は「人物」「花鳥」のように、特定の図柄を想起できないものが多いが、いくつかは本図中の図と一致すると思われるものがあった。佐竹永湖作「桜猿彩色」は、中央の一番上の図がそれにあたると思われる。柴田慎次郎作「蒔絵額釣燈籠」は中央のやや低いところに掛かる黒い額だろう。実はこの作品は、現物が石川県立美術館に所蔵されており、一目でそれとわかる程度に写し取っていることが確認できる。 このような例があることから見て、他の作品も現物を参照して描いているものと思われる。展覧会図録というものがまだなかった時代であり、資料的価値は非常に高いといえよう。 なお、本図の作者三代広重自身も、この博覧会に出品している。「名所人物画」が目録に載るが、本図に描かれたもののうちから特定することはできない。(田島)
史料群概要
画像有