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解説:1877(明治10)年、上野公園で行われた第1回内国勧業博覧会の会場風景。 内国勧業博覧会は、明治政府が殖産興業政策の一環として開催した博覧会。1877(明治10)年に第1回の博覧会が行われ、以後、1881(明治14)年、1890(同23)年、1895(同28)年、1903(同36)年と5回行われた。万国博覧会の国内版というべき形式で、全国各地から出品された。内容は、鉱工業、農業、美術工芸など多岐にわたる。 本図は、山上の博覧会場だけでなく、不忍池や山内の名所も視野に収めている。作品名に博覧会の名は書かれていないが、暁斎はこれとよく似た構図の作品を「東京名所之内 明治十年上野公園地内国勧業博覧会開場之図」(No.661)と題して描いている。本図でも、画面ほぼ中央で菊の紋を付けた馬車が、群衆に迎えられて正門に到着するところが見え、天皇が出席する博覧会開場式(8月21日)が、まもなく行われることがわかる。本図は、バラバラに用いられた遠近法によって奇妙な空間になっている。建物の大きさの比例も無視され、中央の美術館が実際以上に巨大に描かれている。山の下、右手に見える風車は、井戸水を汲み上げる装置として作られた。これを描いている錦絵は少ない。3枚の内、右の1枚だけ摺りが違うため、色が青っぽい。 暁斎は第2回内国勧業博覧会の図(No.719)も描いているが、構図は本図とほとんど同じ。特に左の一枚は、本図をそのままトレースして版を起こしたと見られる。(田島)
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