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解説:内国勧業博覧会は、明治政府が殖産興業政策の一環として開催した博覧会。1877(明治10)年に第1回の博覧会が行われ、以後、1881(明治14)年、1890(同23)年、1895(同28)年、1903(同36)年と5回行われた。万国博覧会の国内版というべき形式で、全国各地から出品された。内容は、鉱工業、農業、美術工芸など多岐にわたる。 本図は、明治23年、上野公園で行われた第3回内国勧業博覧会の主な陳列品と建築を石版で刷り出している。今日の展覧会図録のようなもの。多数の陳列品が描かれているが、この展覧会に出品されたものは数十万点に及ぶと言われ、本図に示されたものはごく一部に過ぎない。本図左の枠外に「先づ陳列の侭写影したるものを集めて此図を製せり。之に漏れたるものは追々写影して其図をつくることあらむとす」とある。さしあたり陳列品の名から目に付いたものを描いたということらしい。 実際に描かれているものは、いわゆる細工物と呼ばれる、装飾的な工芸品が多く、このジャンルが一般の人気を集めていたことがわかる。絵画では、明治の洋画の名品として現在もよく知られている、原田直次郎の「騎龍観音像」(護国寺蔵)が見える。美術工芸品以外では、下方にいくつかの機械と北海道の物産が目立つ程度。 なお、本図には袋が附属し、裏面に博覧会の入場規則等が記されている。(田島)
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